(読了日:2020年1月23日)
ジャック・リッチイ「風味豊かな犯罪」
自宅の洗面器やトイレなどに大量のゼリーが入っている謎の現象の調査を頼まれてヴァンダヴィア邸を訪れた主人公は、依頼人ジェラルドの兄フランクの服を着た使用人がナイフで刺殺されているのを発見し… 最近から素直に探偵を呼んでおけばいいじゃないの。
ジェシ・ヒル・フォード「留置場」
「留置所」として既読につき、読了ツイート省略
バリイ・ペロウン「ラッフルズと嘆きの橋」
とある罪で二年間投獄されていた劇作家メルモスとパリで出くわした怪盗ラッフルズは彼が二人の男に跡をつけられていることに気付く。数日後にベネチアで見かけた際にもメルモスはやはり同じ男たちに尾行されており… 著者覚え書きにより味わいが倍増。
エラリー・クイーン「トナカイの手がかり」
クリスマス・イブ前日、子供動物園のトナカイの檻の中で元コラムニストのスタージスが射殺体のなって発見された。現場にあったプラカードにはダイイング・メッセージと思われる血の指紋が残されていたのだが… エラリーが連想ゲームで即時に解決。
チャールズ・ボークマン「ミスター・バンジョー」
ある裁判のために生まれ故郷に立ち寄ることになった刑事弁護士スペンサーは、地元紙の記者となった幼なじみフレイザーと再会する。しばし昔を語り合った際に話題となった老乞食ミスター・バンジョーの失踪についてスペンサーだけが知る真実とは。これほど静かで深い感動を呼び起こす短編に出会ったことがあっただろうか?と自問せざるを得ない名作。ミスター・バンジョーとスペンサーとの絆が導いた結末に身体中がジーンとした。悪に対する正義についても考えさせられる。アンソロジー編者のホウクが「今後の作品を待望します」と添えたのも納得。
ウィリアム・ブリテン「ストラング氏 証拠のかけらを拾う」
老いた化学教師ストラングは弁護士をしている昔の教え子から、生徒の一人クリフが宝石店のショーウィンドウを割って指輪を盗んだとして逮捕されたと聞き、早速現場へ向かうが… 教え子を信じ切ろうとするストラングの優しさにほっこり。
ポーリーン・C・スミス「垣間みた死体」
元端役女優のモリスン夫人が自宅で撲殺された事件で、彼女の庭の手入れを手伝っては小遣いを受け取っていた保護観察中の少年エディが容疑者となってしまう。そのきっかけを作った主人公ミリアムの仕切り屋ぶりがやたら面倒くさかったことしか記憶にない。
ローレンス ・トリート「ろうそくの炎」
既読につき、読了ツイート省略。
フランク・シスク「蠅叩き」
裏の仕事で大金を手に入れて悠々自適の毎日を送るマフィアのサッコヴィノの前に旅行者を装った殺し屋が現れるが… サッコヴィノが大嫌いな蠅を退治する際に使う小道具がすごすぎて笑ってしまった。結末は予想可能であっけないが、シスクらしい不気味さは健在だった。
ジェラルド・トムリンスン「ファーガスン嬢対JM」
図書館利用者の顔・名前・借りた本を記憶することが特技の司書ファーガスン嬢は、モルダヴィという男があるジャンルの本を読み漁るたび、それに関する犯罪が起きることに気が付いて… 素人おばちゃん探偵とプロ犯罪者の駆け引きが微笑ましい。
ジェイムズ・ホウルディング「陥穽」
革命組織に資金提供する見返りとして10%の分け前を受け取ることで私腹を肥やしてきた法務大臣が当の組織に誘拐される。これはあくまでも政府に身代金を払わせるための演技のはずだったが… 策士策に溺れるの典型例。何の意外性もなく終わってしまって残念。
ヘンリー・T・パリィ「ラヴ・ストーリー」
新聞配達の少年ジョニーは憧れの女性エリザベスに頼まれ、彼女と恋人ポールの間を行ったり来たりする秘密の手紙を運ぶ手伝いを始めるが、やがてポールからの返事の回数が減り始め… どこまでも一途で純粋なジョニーの想いが甘酸っぱくて切ない一編。
ビル・プロンジニ「私立探偵ブルース」
何の予定もない日曜の朝、海を眺めにドライブに出かけた私立探偵は、キャンピングカーがパンクして途方に暮れる三人の若者に遭遇する。タイヤ交換を手伝ううち、彼らの周りに漂う妙な緊張感が気になり始め… タフな精神力のハードボイルド探偵にシビれる。
アイザック・アシモフ「些細な事柄」
「ちょっとしたこと」として既読につき、読了ツイート省略。ブログ内にも紹介なし。
リリアン・デ・ラ・トーレ「ベッドラムの奇計」
精神病院の実態を探るべく、あえて奇妙な言動をとって入院した交易商サイラスは、いざとなったらすぐに退院手続きをとるように甥ネッドに約束させておいたのだが… ジョンソン博士もの。作戦や細工がいかにも作り話という感じでしらけてしまった。
ジョン・ラッツ「メール・オーダー」
通販中毒の妻アンジェラの浪費癖に悩まされるハロルドは、しばらく何も購入していなかった通販会社から脅迫めいた警告文が届いていることに気付く。その矢先、謎の男二人組に拉致されてしまい… もう少しコメディ色が薄ければ「奇妙な味」の仲間入りかも。
エドワード・D・ホウク「レオポルド警部故郷に帰る」
親代わりとなって育ててくれたおじのジョーがひき逃げされて亡くなったとの悲報を受けて故郷に戻ったレオポルドは、おじの再婚相手などから事情を聴くうち、ジョーの死には何かがあると感じ始めるのだが… 人情味に溢れた名作。ほろ苦い結末。