(読了日:2019年7月15日)
「逃げるばかりが能じゃない」
勤め先の信託銀行から20万ドルもの大金を着服したポッターはあっさり自首をして刑務所へ。しかし、金の隠し場所に関してだけは意地でも口を割らず…
「金は天下の回りもの」
同僚とのポーカーで一週間分の給料をフイにしてしまったアーヴは、帰り道で強盗に襲われたふりをして警察に被害届を出したところ、本来はいるはずもない犯人が捕まったとの連絡が入り…
「ペンフレンド」
マーガレットは自宅を訪れた警官から、姪マージーが数年にわたって囚人と文通していたこと、その囚人が数日前に脱走したことを聞かされ…
「信用第一」
亡き父の友人で今は輸入業で荒稼ぎをしているパスチェッティの下で働くトニーは、史上最高額の取引の話が持ち上がった際、パスチェッティと取引相手の両方を騙して大金を手に入れたのだが…
「犬も歩けば」
貧しい生活を送るジョーが、なけなしのお金をはたいて乗ったバスで隣り合わせた身なりのいい男の後を尾けていくと、突然その男が路上で倒れて動かなくなってしまい… ふと魔の差した善人が良心を取り戻すことで余計ややこしい事態に巻き込まれていく話。
「41人目の探偵」
十数年前に妻を殺した犯人を街で偶然見かけたマンローから、彼と直接話ができるように仲介役を務めてもらえないか、との依頼を受けた探偵のタイリーは、中古レコード屋で男に接触することに成功し、音楽の話で意気投合 (したふりを) する。売りたいレコードを見せるという口実で、タイリーは男をホテルの部屋に呼び出すのだが…
「不在証明」
一人暮らしの娘シャロンが既婚者ベンと付き合っていることに嫌悪感を覚えているトロッター夫人だったが、ある日、シャロンがシャワーを浴びている間にかかってきたベンからの電話に出る羽目になり…
「恐ろしい電話」
共同電話に加入中のミセズ・パーチは、いちいち通話を盗聴してくるおしゃべり好きな近所の女性たちにうんざりしている。そんなある日、郡保安官事務所から「話したいことがある」との連絡が電話で入り…
「競馬狂夫人」
賭け屋から「ツケの清算が済むまで次の賭けは受け付けられない」と言われた競馬好きの主婦フランが、財布を持たずに家を出てきてしまったという芝居をバス停の前で繰り返して小銭を稼いでいると…
「気に入った売り家」
今は亡き息子と暮らした思い出の家を法外な値で売りに出し続けるグライムズ老婦人のところへ、ようやく「言い値でも構わないから買い取りたい」と言う男性が現れて…
「老人のような少年」
仲間の誘いを断りきれずに銀行強盗に加担し、三年の刑期を勤め上げた少年ジャッキーは、現在も服役中の友人アリーの母親に挨拶しに行くが…
「最後の舞台」
「最後の脱出」として既読。
「ふたつの顔を持つ男」
ひったくりの被害に遭った女性が犯人の顔を特定するために警察署で大量の写真に目を通していると、どこかで見かけたような気がする男の顔を見つけ…
「親切なウェイトレス」
ホテルのレストランで働くベテランウェイトレスのセルマは、毎晩欠かさず食事をしにくる老婆にひどく気に入られ、万一の場合には遺産を受け取ってほしいと言われるが…
「付け値」
深夜に自宅の居間で押し込み強盗と鉢合わせしてしまったモートは「妻を殺してくれたら大金を支払ってもいい」と交渉を持ち掛けるが…
「眠りを殺した男」
寝タバコの不始末が原因で妻を焼死させてしまった過去を持つキャベンダーは、ある時を境に不眠に悩まされるようになり、脳に詳しい医者に相談してみたところ…
「処刑の日」
妻を殺した罪でロッドマンを電気椅子送りにした検察官セルヴィの前に、みすぼらしい格好の老人が現れて「今夜死刑になるあの男のことで話がある」と言い…
Aira's view
今までに何百という短編小説を読んできた中で特に印象に残っている作家の一人がヘンリイ・スレッサー。ヒッチコックのお抱え作家として TV シリーズのヒットに多大なる貢献をした人物なだけあり、大胆なツイストや切れ味のよいオチが非常に冴える書き手だが、今回のような彼個人の短編集で作品に触れ続けていると、いつしかその面白さに反応するアンテナの感度が落ちるのか、途中からマンネリを感じてしまったのが残念だった。本格、サスペンス、社会派… といった短~中編の合間に息抜きのように味わったり、日常に生まれる細切れの時間に軽く手に取ってみたり、そういった読み方の方がスレッサーの魅力を深く味わうには向いているのかもしれない。
うまい犯罪、しゃれた殺人 〈クラシック・セレクション〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 作者: ヘンリイ・スレッサー,高橋泰邦他
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/08/25
- メディア: 文庫
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