Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

ロバート・J・ランディージ編『探偵は眠らない (上) アメリカ私立探偵作家クラブ傑作選 (I) 』

(読了日:2021年5月6日)

ローレンス・ブロック夜明けの光の中に

既読につき、読了ツイート省略。

スチュアート・カミンスキー「ルイス・ヴァンスを撃った男」

ヴァンスと名乗る男から呼び出された私立探偵ピーターズは指定されたホテルの部屋へ出向くが薬の入ったコーラで眠らされてしまう。ふと目覚めると目の前に本物のジョン・ウェインが立っており… 実在した人物が出てくる違和感が巨大。

サラ・パレツキー「スリー・ドット・ポウ」

ジョギング仲間の写真家シンダが海の岩場に転落死しているのを発見した私立探偵ヴィクは遺体を必死の思いで引き上げて警察を呼ぶ。しばらくしてシンダの恋人ジョナサンから「容疑者として逮捕された」と連絡があり… 根性が据わって逞しいヴィクに夢中になってしまった。シンダの愛犬ポウの忠実さと賢さと愛くるしさも魅力的で、犬好きの人にはたまらない仕上がり。ヴィクとポウのチームワークが最大の見せ場。どんな相手にも物怖じせず飄々としている女探偵ヴィクの姿は同性として胸のすく思いがした。気になる探偵がまた一人増えてうれしい限り。

リチャード・ホイト「秘密捜査」

依頼人の家から出てきた女性が同業者のアダだと気付いた探偵デンスンは彼女を尾行して事情を聞くことに成功する。そこから明らかとなる依頼人と妻が抱える問題とは? 呆気なく終わるショートショート。サラッとした感じがスレッサーに少し似ているかもしれない。

L・J・ワッシュバーン「ハラム」

無声映画のエキストラとして撮影に参加中の私立探偵ハラムは、酒の密輸や賭博船の営業で荒稼ぎしているローズの訪問を受け「逃げた愛人カーメンの母親から呪いをかけられて困っている」と助けを求められるが… 見せ場を作るのが上手い、役者兼業の肝っ玉探偵。

ビル・プロンジーニ「骸骨よ、おまえの脚を鳴らせ」

高齢者用ホテル管理人ダミアーノが自室で撲殺された事件を、警官を辞めてパートナーとなったエバーハートとともに名無しの探偵が調べていく。自分に大きな力があるとは思っていない探偵が犯人と向き合った時に下す決断が渋くて痺れてしまった。

ウィリアム・F・ノーラン「長い臨終」

ハードボイルドな私立探偵に関する論文を書くため「探偵小説を読んで現実との違いを教えてほしい」という学生から10日間1000ドルで雇われた私立探偵チャリスだったが、期限を過ぎても小説を読み終わらず… 軽快な読み口が一転、伝説となった銀行強盗が物語にグッと深みを加える。彼の引き際へのこだわりが泣ける。

ロバート・J・ランディージ「デス・リスト」

美女連続殺人に関して被害者の父親から調査依頼を受けた私立探偵ジャコビーは、彼女たちが同じパーティーへの招待状を受け取っていたことを突き止める。他の招待客が次々と殺される事態を恐れたジャコビーは… 美人に弱い探偵の描写がよいスパイスに。