(読了日:2020年2月28日)
トマス・ウォルシュ「最後のチャンス」
既読につき、省略。
ポール・セルー「犯人はシロ」
ゴム園での労働を辞めて帰国の準備をしていた外国人が立て続けに2名殺された事件の真相を在マレーシア米国領事が探る。シリーズもののようだが、主人公がひたすら地味で華がなく、事件の裏もフーン… という薄い印象。アジアが舞台だと興奮度が低いのはなぜなのか。
ピーター・ゴドフリ「殺人の治し方」
海外での仕事を終えて8ヶ月ぶりに帰宅したフェリスは以前から付き合いのあった少女レベッカが姉の夫を視察して少年院に入ってしまったことを知り… キャラの立たない人物が多くて退屈気味だが、真犯人が考えた致命傷の与え方には新鮮味があって膝を打った。
ジョン・D・マクドナルド「アン・ファーリーを探せ」
病身の妻を抱えて将来の不安が尽きない宝石商デュークが考え出した保険金詐欺の方法とは? 50ページ弱という長さゆえか、回りくどさが否めないのは残念だが、主人公の図太さにギョッとさせられたり、ところどころ楽しめる要素は少なくない。
ジョイス・ハリントン「老いた灰色猫」
エリーは部屋からいろんな物がなくなったのも、可愛がっていた野良猫が急に姿を見せなくなったのも、すべて園長のミス・スウィスのせいだと思い込み… 物語の舞台がわかった時にハッとする。ジトネトした不穏な空気が修羅場を生むまでのスピード感がよい。イヤミスが上手い女性作家は何人もいるが、ハリントンはどこかサバサバとした雰囲気があるので、レンデル辺りと比べるとよほど読みやすい。
ブライアン・ガーフィールド「ジョード、最後の捜索」
周辺の山林や河川の水を汚染し続ける製紙工場を恨んで爆破した犯人とみられるマリアが逃亡。保安官ジョードは引退前にもう一花咲かせようとマリアを探し始めるが… 何が言いたいのかよくわからないまま終わってしまった。消化読書。
ビル・プロンジーニ「密売人の島」
ヴァーンが暮らす漁師町の岸向かいに浮かぶ島を買い取ったヴォークナインは住民とあちこちでいざこざを起こしていたが、ある日を境にパッタリと姿を見せなくなり… ホウクの解説にある通り、郷愁と推理がうまく融合した佳作だが、主人公の決断には共感できず。
ローレンス・ブロック「紳士協定」
帰宅したトレビザンドは寝室を荒らしている泥棒に遭遇して咄嗟に銃を向ける。「何かの役に立てるはずだから警察には突き出さないでくれ」と懇願する泥棒を前にトレビザンドはある作戦をふと思い付き… 主人公と泥棒のテンポのよい会話の後に訪れる衝撃の結末。ローレンス・ブロックの短篇は、念入りに研がれた鋭いナイフのようにスパッとした切れ味のものが多く、スッキリとした読後感を楽しめるのが好きです。
バーバラ・キャラハン「ドラマの続き」
先妻との間にできた、まだ見ぬ娘を探し求めるドラマの主人公ジェイスンを自分の父親だと思い込み、養父母の目を盗んでジェイスンを演じる俳優に会いに行くが… あまりにも歪んだ内面世界に閉じこもる主人公の生き方は読んでいて息苦しくなってくるほど。
ロバート・コルビー「巷に黄金の雨が降る」
主人公ブロックが多額の現金投資先を募集する広告を新聞に載せたところ、上質な偽札を買い取ってほしいという男が早速現れて… ブロックの几帳面で義理堅い性格と一本筋の通った稼ぎ方が面白い。彼の素性が明かされる最後の最後でニヤリとさせられる。
ジェイムズ・マッキミー「ハリー・ウォーターズの犯罪」
生活に困窮中の詩人志望ハリーは、何か犯罪を起こして刑務所行きになれば金銭の心配など一切せずに好きなだけ詩が書けるのではないか?と思い付き、通い慣れた食料品店で強盗を働くのだが… ユーモアたっぷりでオチも見事に決まった佳作。
ロバート・L・フィッシュ「よそ者」
ひき逃げ死亡事故の現場で車を目撃したジョージは、警官のフリをして車の持ち主を調べ出し、口止め料として1万ドルを要求するが、その相手が実は… 街の暗部を知らず、欲に任せて動いてしまったよそ者ジョージを待ち受ける皮肉な結末とは。後味が苦々しい。
ジャック・リッチイ「未決陪審」
同業者を殺害した強盗ウィンクラーの裁判は、陪審の意見が割れ続けて評決が出ず、判事レムズフォードが陪審全員を解任する騒ぎに。裁判が進まぬ間にウィンクラーが脱獄して… 謎解きにチラッと混ざるロマコメがよいスパイス。名バディのヘンリー&ラルフが大活躍。
R・L・スティーヴンズ「知恵の値」
宝石店で働くジェフは、しばしば出張で足を運ぶニューヨークで暮らす愛人マーサに会いに行ったところ、いきなり現れた覆面の男2人組に誘拐されてしまう。男たちは25万ドル相当のルビーを手配するよう要求してくるが… 結末の衝撃が素晴らしい、ホックの傑作。
ジェフリ・ブッシュ「真贋」
とある大学で面接なしに教授としての職にありついたハリスは、学生カープの提出したレポートが完全な盗作であると直感するが、その原典がどうしても見つからず、カープ本人から直接話を聞こうとするが… 一問一答形式の会話の連続が生み出す緊張感がものすごい。