(読了日:2020年5月7日)
R・L・スティーヴンス「チキン・スープ・キッド」
ギャンブルで借金が嵩み、やむなく競馬の八百長に手を貸す運びとなったスポーツ記者のクインリンは、騎手エングルが出走前に必ず飲む母親の手作りチキンスープに薬を入れるよう、賭け屋に命じられ… 悪役の諦めがよすぎて拍子抜けしてしまった。
ルース・レンデル「茸のシチュー事件」
自然食品店主アクセルの妻がベランダから転落死したのは自殺であると断定しようとした矢先、アクセル手製のシチューで彼女が一度死にかけたことがあるという証言が取れて… 部下に対してツンデレを発揮する主任警部ウェクスフォードのキャラが秀逸。
レックス・スタウト「毒薬ア・ラ・カルト」
百万長者の知人ヒューイットにせがまれて「美食学派十人会」なる集いに専属コックのフリッツを派遣することになり、自らもその食事会に参加したウルフは、招待客の一人が毒殺されるという事件に巻き込まれ… アーチャーとの絡みが少なくて寂しい限り。
キャロル・カイル「凶悪な庭」
夫を亡くしてから荒れ放題になった畑でアサガオの蔦に絡まって息絶えたウサギを目撃した老婆は、恐怖のあまり、その畑に育つ野菜を口にすることができなくなってしまい… 植物を見る目がすっかり変わりそうな「奇妙な味」の短篇。唐突な終わり方が気味悪さを煽る。
スタンリー・エリン「特別料理」
既読につき、省略。
ロアルド・ダール「おとなしい凶器」
既読につき、省略。
アイザック・アシモフ「追われずとも」
かつてバーコヴィッチという編集者に頼まれて書いた原稿が未だにどの雑誌にも掲載されていないことが不満だと「黒後家蜘蛛の会」で告白した作家のステラーは、編集者にとって都合の悪いことでも書かれていたのでは?と指摘され… スッキリしない終わり方。
ダンセイニ卿「二本の調味料壜」
「二壜のソース」として既読につき、省略。
エドワード・D・ホック「使用済みティーバッグ窃盗事件」
恋人グロリアの同級生から「親友シーモアが使い終わったティーバッグを盗んでほしい」と頼まれた怪盗ニックは、シーモアが頻繁に出入りするクラブにウェイターとして忍び込み… 変装、隠し文字など盛り上げ要素が多いわりには興奮できず。
T・S・ストリブリング「亡命者たち」
亡命直前の前独裁者ポンパローネが私設秘書とともに滞在するホテルで、オーナーのグリレットが書斎で死亡した。彼の手元には古い日付と「恨み清算」の文字が書かれた美女の写真があり… 探偵役の心理学者ポッジオリの存在感が乏しく、終わり方も締まらない。
ネドラ・タイアー「幸せな結婚へのレシピ」
何世紀にもわたって母から娘へと受け継がれてきたレシピを参考に作ったケーキで何人もの夫を殺してきたルーシーの身に起こる悲劇とは。今までしてきた悪事の数々の割には警戒心がない主人公に拍子抜け。「奇妙な味」の仲間に入れるには2〜3歩足りず。
ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク「死の卵」
森で発見された首吊り死体を調べ終わったばかりの警部フレイプストラと部長刑事デ・ヒーアのもとに、今度はイースターのチョコエッグを食べた女性が中毒を起こしたとの通報が入り… 事件、捜査、解決の流れはごくごくオーソドックスな類だが、中年警部フレイプストラと美男優秀若手刑事デ・ヒーアという組み合わせだけでも傑作なのに、フレイプストラのデ・ヒーア愛がものすごく、一方的に好きすぎるがゆえのツンデレ具合もまた出色で、この二人のやりとりが何よりも面白い。シリーズで訳されていたらいいのに…!
ジェイムズ・ホールディング「ノルウェイ林檎の謎」
世界一周豪華客船で一人旅中の美女アンジェラが船室で喉にリンゴを詰まらせて死亡する。これがもし殺人事件だったら… という仮定に基づいて推理を始めた2人の作家リロイとキングは… タイトルから明らかな通り、クイーンへのトリビュート作。
J・J・マリック「ギデオンと焼栗売り」
焼栗売りのベン爺さんが若者による2つの集団に襲われ、焼栗を奪われた上にケガまで負ってしまう。ベンとは長年の友人である犯罪捜査部長ギデオンが調べを進めていくと、ある犯罪者の姿が浮かび上がり… 読後に思わず「それで?」と言いたくなるほどの凡作。
ビル・プロンジーニ「いつもの苦役 (グラインダー) 」
安価で美味しいにもかかわらずほとんどお客がやってこないデリを贔屓にするチンピラのミッチェルは、ある日、老店主ギフトホルツに「何か別口の稼ぎでもあるのか」と尋ねたところ… 英語が苦手な店主との頓珍漢なやりとりからの転調が傑作。ただ、邦題には「グラインダー」とルビを振らない方がよかった。
フランシス・M・ネヴィンズ Jr.「ドッグズボディ」
街のあちこちで犬や猫が毒殺された事件を調べる警察署長クナウプと詐欺師フリッツは、ある富豪が飼い犬に全財産を相続させた事実を掴み… 著名作家の評伝で高い評価を受けている作家だが、短編には魅力を感じることができず、今回も消化読書に。