シャーリイ・ジャクスン「お告げ」を読んで
昨日『街角の書店 18の奇妙な物語』(創元推理文庫, 中村融編) に収録されているシャーリイ・ジャクスン「お告げ」を読んだ。「くじ」など不気味な雰囲気の作品であまりにも有名なジャクスンが、まさかこんなにほのぼのとした小品を書いていたとは!今年一番の大きな驚きに襲われた。
シャーリイ・ジャクスン「お告げ」読了。臨時収入で家族に贈り物を買おうと思いメモを片手に出かけたおばあちゃん。頑固で恩着せがましい母親のせいで恋人からの求婚に三年間も返答できず遂に衝動的に家を飛び出した女性。二人の女性が直接顔を合わせることなく運命を交差させていく。ほのぼの短編。
— aira's bookshelf (@airasbookshelf) 2017年3月6日
直接顔を合わせたり言葉を交わしたりすることもないまま、お互いの人生に少なからず影響を与え合う二人の女性を描いた不思議な夢物語のように見えるが、実はこういうことは現実にいろんな人生のいろんな局面で幾度となく起きていることなのだろう。特に、人や物との出会いはその最たるものに思える。
しかし、誰かや何かと出会ったり影響し合ったりする以上の頻度で、誰かや何かの存在を全く認識しないまま生きていたり、ぎりぎりのところで出会わずにすれ違ったりしているのもまた事実である。わたしたちの人生はそうやって不器用ながらも一歩ずつ確実に前進しているのだと思う。
そんなことを考えてからふと日常に目を向けると、自分と縁のある人、目の前にある物 (ノート、鉛筆、パソコン、マグカップなど、そこにあって当たり前の存在) 、手に取って読んでいる本 (あるいは書棚や床に積ん読している本) 、心を震わせた映画、キレイだなと感じた景色… そういったものすべてがとても貴重で何物にも代えがたく思えてくるから不思議だ。
江戸川乱歩編『世界短編傑作選』がきっかけで毎日のように読むようになった海外アンソロジーに収録されている数多の作品たちとの一期一会。これからはもっともっと大切にしよう。