(未邦訳作品につき『コーネル・ウールリッチの生涯』(早川書房) を参考に内容を紹介)
Story
友人と一緒に出かけたパーティーで、うんと歳の離れた裕福な作曲家ウィルビーから気に入られたポーリーンは、花束・本・衣服・手紙といった熱烈な愛情表現を受けるが、二人の関係がプラトニックなもの以上に発展することはなかった。なぜなら、ポーリーンはウィルビーの愛情とお金がもたらす副産物だけを愛していたからであり…
Aira's View
自分の虜になっている男に対して自分が持っている影響力の大きさに酔いしれるポーリーンのサディストぶりが目に余る。評伝著者によると「初期の作品群の中ではあらゆる意味で最低の作品」とのこと。あらすじを読んだだけでも筋立ての不味さや設定の無滑稽さが伝わってくる。
この小説の不恰好さの示すもの。それはウールリッチが自身の人生と向き合う時の不恰好さなのではないかと、ふと思った。ウールリッチが人生に対して覚えていた居心地の悪さが本作に溢れているからこそ、読んでいて辛く重苦しい気持ちになったのかもしれない。そんな気がした。