Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

ヘンリイ・スレッサー『うまい犯罪、しゃれた殺人』

(読了日:2019年7月15日)

「逃げるばかりが能じゃない」

勤め先の信託銀行から20万ドルもの大金を着服したポッターはあっさり自首をして刑務所へ。しかし、金の隠し場所に関してだけは意地でも口を割らず…

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ビル・プロンジーニ & ジョー・ゴアズ編『現代アメリカ推理小説傑作選 1 』

(読了日:2019年7月12日)

ダン・J・マーロウ「第二の人生」

死刑執行日が近付く中、当の死刑囚である自分よりもひどく精神的に追い詰められていく看守レイモンドを不思議に思う主人公は、臓器提供の意思を神経外科医に伝えた後、銃殺隊の待つ庭へ向かい… 何となくの予感が最後の一言で決定的になるのが気持ちのよいショートショート

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メアリ・ヒギンズ・クラーク編『ショウほど素敵な犯罪はない アメリカ探偵作家クラブ傑作選 (11) 』

(読了日:2019年6月30日)

ジョン・L・ブーリン「イーストポートでの再演」

演劇評論家ジャドスンが深夜に編集室である舞台批評を書いていると、その舞台に出演していたベテラン俳優のスピヴィーが突然姿を現し、かつて初舞台での演技を酷評された際、酔った勢いでジャドスンを狙撃しようとして失敗したことを告白するが… 何気ない賞賛や批判の言葉には人の一生を良くも悪くも左右する大きな力が秘められていることを訴えてかけてくる作品。1979年初出の短編であっても全く時代を感じないのはテーマがそれだけ普遍的である証拠だと感じた。批評をするのは自由とはいえ常に大きな責任が伴うこともまた世の常。言葉は大切。

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