Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

メアリ・ヒギンズ・クラーク編『ショウほど素敵な犯罪はない アメリカ探偵作家クラブ傑作選 (11) 』

(読了日:2019年6月30日)

ジョン・L・ブーリン「イーストポートでの再演」

演劇評論家ジャドスンが深夜に編集室である舞台批評を書いていると、その舞台に出演していたベテラン俳優のスピヴィーが突然姿を現し、かつて初舞台での演技を酷評された際、酔った勢いでジャドスンを狙撃しようとして失敗したことを告白するが… 何気ない賞賛や批判の言葉には人の一生を良くも悪くも左右する大きな力が秘められていることを訴えてかけてくる作品。1979年初出の短編であっても全く時代を感じないのはテーマがそれだけ普遍的である証拠だと感じた。批評をするのは自由とはいえ常に大きな責任が伴うこともまた世の常。言葉は大切。

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パパ・ベンジャミン (1935)

Story

彼の曲を知らぬ者はいないと言われるほど有名なジャズ作曲家兼バンドリーダーであるエディ・ブロックが、ある日の明け方、まるで死人のように黒ずんだ不気味な顔をしてニューオーリンズ警察署に現れる。エディのただならぬ様子に戸惑うばかりの警部補たちに向かって、彼は「ついさっき人を殺してきたところだ」と驚きの告白を始め…

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小鷹信光編『ブラック・マスク異色作品集』

 (読了日:2019年5月10日)

フレデリック・ネベル「致命傷」

将来有望な若手ボクサーのジェフは、ネズミ面をした小男フィンクにつきまとわれるようになって以来顔色が冴えない。何らかの弱みを握られて日々金銭を巻き上げられている様子。対チャンプ戦の直前、フィンクの差し金で右目にひどいケガを負ってしまったジェフは… ジェフとその恋人キティを心から応援する良き友人として登場するベテラン刑事ライアンがちょこちょこ存在感を出してくるので「この人、何だろうな?」と思っていたら、物語によい味付けをする活躍を見せてくれてうれしい。原題 With Benefit of Law にも納得がいった。

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