Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

各務三郎編『クイーンの定員 IV 傑作短編で読むミステリー史』

 (読了日:2017年10月28日)

ジョン・コリア「壜詰パーティ」

女と縁のないフランクは趣味で何かを蒐集して日々の慰めにしようと骨董品古道具店を訪ねる。何でも願いを叶えてくれる妖魔が入った壜を5ドルで買い取り、豪華な宮殿に美女を侍らせて夢のような時を過ごしていたが、徐々に女たちの美しさに物足りなさを覚え始め…足ることを知らないフランクの心理と彼を待ち受ける皮肉な運命を、ジョン・コリアが得意とするユーモアに満ちた不思議世界で味わう軽妙な一篇。別の作家が書いたらジトッとしそうな結末を笑って読ませておき、その後でふと「いや、でもこれ、笑いごとじゃないぞ」と真顔にさせるところがコリアの魅力。

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各務三郎編『クイーンの定員 III 傑作短編で読むミステリー史』

 (読了日:2017年6月24日)

デイモン・ラニアン「ドロレスと三人の野郎ども」

セントルイスで抗争を続けて互いに大きなダメージを受けてきた三人の大物ギャングが和平会議を開くことに。その道すがら、近年頭角を現しつつある若手ギャングのファロネを殺害。会議を控え、三人は揃ってとある美人ホステスに熱を上げてしまい… 『クイーンの定員 III』いきなり痛快な一篇でスタート。美人ホステスのドロレスが生まれ持った美貌に度胸と機転を合わせてあっぱれな行動をする様子にスカッとした。互いを出し抜くことで頭がいっぱいで無防備になる三バカギャングがどこか愛おしく思えてくるほどのおかしみに包まれた愉快な作品。

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エラリイ・クイーン編『クイーンズ・コレクション 1』

(読了日:2017年6月4日)

レックス・スタウト「殺人鬼はどの子?」

探偵ネロ・ウルフ宅を約束もなく訪れた法律事務所の所長秘書バーサ・アーロンを助手のアーチーが迎えて事情を聞く。事務所の共同経営者の中に敵方の依頼人と通じている者がいるので調べてほしいと言う。だが、アーチーがネロを呼びに行っている間に… 相変わらず尻重なウルフのため、ブツクサ言いながらも身軽に動き回るアーチー・グッドウィンが典型的な「仕事のデキる」男でとにかくカッコいい。ハンサムであることを強みと自覚して仕事に活用する姿も飄々として楽しい。褒めたりはしないがアーチーの意見をきちんと聞くウルフのツンデレぶりもよい。

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