Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

タイムズ・スクェア (1929)

Story

ナイトクラブでダンサーとして働く女性テリーが二階からダンスフロアに転落して意識不明に。その場に客として居合わせた男性クリフが病院まで付添い、その後も毎日のように彼女を見舞うように。二人はまもなく激しい恋に落ち…

Aira's View

クリフとテリーが繰り返す別離と邂逅を軸にした長編。とある事情からクリフを肉親と思い込む大女優デジレイなど、話に奥行きを与える人物も何人か登場する。必要性に疑問を感じる文章が少なからず存在し、冗長・緩慢な印象が拭えない面はあるものの、クセのある人物たちの言動や内面がしっかりと描かれており、ジャズエイジを生きた人々の生活が目の前に鮮やかに広がる感覚を味わえる。

複雑な執着を捨てられないがゆえに人生の選択肢が乏しくなっていく男、人を不幸にすることに一種の喜びさえ感じる屈折した女、成功を手に入れながらも過去の亡霊にすがることをやめられない孤独な女…。そんな人々の悲しき性や醜さなど描く場面でノワールさが際立つ作品。後年の『マンハッタン・ラブソング』へつながる階段の第一歩といった印象。 

Special Thanks

S さんのご厚意により、本作を読むことができました。ありがとうございました。

Work

原題:Hollywood Bound (連載時), Times Square (ハードカバー)
訳者:本戸 淳子
掲載:『EQ 199年11月号」光文社

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