Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

悲鳴をあげる本 (1939)

Story

図書館で司書として働く主人公プルーデンスは、三流ロマンス小説を返却しに受付へやってきた中年女性から「41ページが見当たらなかった」と告げられ、怪訝に思う。消えたページには一体どんな秘密が隠されているのか…?

Aira's View

高い誇りと強い正義感を持って司書の仕事をテキパキとこなす主人公プルーデンスの「いったんおかしいぞと思ったら、納得がいくまでつきつめずにはいられない性質」(引用) に奇妙なまでの親近感を抱きながら、話の展開を楽しめた。

ウールリッチは暴力性の目立つ刑事を描くことが多いが、本作に登場するマーフィは若者らしい爽やかさと生意気さに加えて、機転の速さやフットワークの軽さもまた魅力的であり、忘れられない男性キャラクターになりそう。

疑惑、暗号解読、聞き込み、張り込み、尾行、アクション、そして最後に…。ミステリを面白くするための要素がこれでもかと詰め込まれた作品からは、当時パルプマガジン向けの短編を量産していたウールリッチの勢いと遊び心が感じられる。

ピンとこない作品が多かったアンソロジー『レディのたくらみ』の最後に、こんなに楽しい一編が待っていてよかった。

Work

原題:The Book That Squealed
訳者:田村 義進
収録:『レディのたくらみ アメリカ探偵作家クラブ傑作選 (2) 』創元推理文庫

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