(読了日: 2024/04/12)
マックス・アラン・コリンズ「大理石のミルドレッド」
中年女性ミルドレッドから、事業家の夫が安ホテルに部屋を借りて
頻繁に誰かと会っているらしい、状況を詳しく調べてくれないかと相談を受けた私立探偵ヘラーは、この夫婦に何かしら非常に深刻な問題が隠されていることを察し… 同性愛に関することをほんの少し口にすることも憚られるほどの差別が横行していた時代のアメリカで実際に起きた犯罪を元にした短編。ミルドレッドが現実から目を背け続けているうちに正気を失っていく姿が痛々しくもあり、常軌を逸した行動が潔くもあり、複雑な読後感でした。
ジョン・ラッツ&ジョッシュ・パークター「天秤座のダイイング・メッセージ」
デザイン画を盗まれた服飾デザイナーの依頼を受けた探偵が画を回収して犯人を突き止めた後に自宅で射殺された。直前に彼と電話をしていた相手だからという理由で犯人扱いされて胃が痛い探偵ナジャーが放つ逆転打は…? 暗号解読がキモになる話。二人の刑事からチクチクと嫌味を言われ続けたナジャーが「お前の星座は何だ」と聞かれた時に腹立ち紛れに「銀行口座だ」と返す場面は笑ってしまいました。原文では何て言っているんでしょうね? ナジャーの性格描写や心のぼやきにはユーモアが一杯。ラストも清々しくてよい。
ロバート・J・ランディージ「消えた乙女」
新作リハ中に失踪した舞台女優を探してほしいとの依頼を劇作家から受けた私立探偵デルヴェッキオは共演者やルームメイトから話を聞き… 死体が勝手に居場所を知らせてくれて解決したため、探偵ならではの推理の冴えも何もない結末が物足りなかった。
ウェイン・D・ダンディー「ユダの標的」
私立探偵ジョー・ハニバルもの。ひき逃げと狙撃がいずれも未遂に終わって命を繋いだ友人ボマーが今度は愛車を爆破されてケガを負ったため、ハニバルは彼を州から連れ出して人気の少ない湖畔のロッジへ身を潜めることに決めたのだが… 犯人の真の狙いは?滅多なことでは動じない度胸と腕っぷしの強さと状況を素早く読む力が揃っている上に情に厚い探偵ハニバル。今回は友人を大切に思う気持ちが逆に災いを呼び込んでギリギリのところまで追い詰められてしまうという筋書き。サスが傷んでいるらしき古いマスタングを乗り回しているところが特に好みです。
マイクル・コリンズ「白雪と黒犬」
アル中の会社重役の自宅で妻が刺殺された事件の調査を弁護士から依頼された片腕の私立探偵ダン・フォーチューンは、彼女の愛犬の死体が周囲に足跡も何もない雪の上に放置されていたことが腑に落ちず… 夫が酒浸りになるのも理解できる深い孤独が切なかった。
スー・グラフトン「最高のグラス」
派手なスパンコールのドレスに身を包んだ二十歳前後の女性モナから、つい先日バーで出会って意気投合した勢いで男女の仲になった相手が突然姿を消して困っている、との相談を受けた探偵キンジーは、彼女が隠している「何か」を探り出そうとするが… 消化読書。
ローレン・D・エスルマン「神の恩寵に浴するもの」
ベッドで事後に息絶えた司祭を何とかしてほしいと上階に住む娼婦ライラから相談されたけた私立探偵ラルフが、司教の手下と協力して死体を司祭館のベッドに運んだ直後、ライラは自宅に仕掛けられた爆弾で命を落としてしまい… 犯人は誰の目にも明らかゆえに謎解きの要素は非常に薄いものの、警官時代のパートナーで共に汚職で解雇されたデイルとのくされ縁ぶりや気心が知れた者の間でだけ成り立つ皮肉まじりの軽妙な会話が、読んでいて小気味よかった。いくら疲れていたとはいえ、すぐ上の階の爆発音に気付かないのはどうかと思うけれど (笑
ロブ・カントナー「置き去りにされた女」
超軽量機で森の中に不時着した探偵パーキンズは、遠くから聞こえてくる女性の叫び声に気付く。声のする方向へ歩いていくと見すぼらしい掘立小屋が建っていた。扉を開けた彼の目に飛び込んできたのは、鉄製の支柱に手錠で繋がれた全裸の若い女性の姿で… 多くを語らない女性を注意深く (なさそうな素振りをしながら) 観察、ほぼ正しく状況を把握した上で、あえて女性の誘いに乗るパーキンズがカッコよかったです。超軽量機を操縦できる腕も素敵ですが、作品によっては「いくら何でもそれはないわ〜」というトンデモ展開に使われてしまうのが玉に瑕ですね。
ビル・プロンジーニ「近くの酒場での事件」
既読につき読了ツイート省略
ジョージ・C・チェスブロ「カンダラ」
インド人留学生インディラから「婚約者のプラムが急に会ってくれなくなった」との相談を受けた犯罪学教授兼私立探偵のフレデリクスンは、プラムと極東学部長デヴ・レジャの間に何らかの問題があることを嗅ぎつけるが… あまりにも酷い話で呆然としました。
アーサー・ライアンズ「死の二重写し」
新聞記者時代からの友人スティーヴを自動車事故で失った私立探偵ジェイコブ・アッシュは、彼の妻から「夫は何かを嗅ぎつけて殺されたのよ」と聞かされ、彼の死の真相を探り始める。麻薬捜査関係の記事の切り抜きに残されたメモ「S.B.109」の意味とは…? 疑わしい登場人物が一人しか出てこなくて、案の定、その人物が犯人でした。有名な賞を一度獲ってしまうと後々その栄光の陰で本人が苦しむことになるのは、いろんな職業の世界で起こりうることですね。過去の自分を超えることを常に意識しなければならないのは、かなりしんどいことでしょうね。
ジェイムズ・M・リーズナー「決死のサヴァイヴァル」
息子ジェレミーが父親ロイの影響を受けて銃や暴力を愛する大人に育ってしまう前に何とか養育権を取り戻したいと訴える依頼人コニーのために、まずはロイと親しくなるべく銃マニア向け雑誌を片手にバーへ繰り出した私立探偵コーディーは… 元軍人ヘイズが運営する軍事訓練施設にロイの友人として連れて行かれたコーディーが、万一の際には自分で家族を守れる男になれ!と民間人を煽って1回400ドルの訓練に通い詰めさせているヘイズとその部下たちに不気味な違和感を覚え、身体を張ってジリジリと真相に近付いていく過程がスリリングでした。
L・J・ワッシュバーン「ハリウッドの無法者」
元保安官助手で俳優兼探偵のハラムは、撮影中に壊れた長年の相棒コルトをハリウッド随一の修理屋ビルに託した。数時間後に銃を受け取りに行くと、急にビルが他人行儀な接客を始めて… ビルの一風変わったSOSを瞬時に理解するハラムの活躍が爽やか。
