Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

アイザック・アシモフ他編『いぬはミステリー』

(読了日:2022年07月11日)

ロス・マクドナルド「眠れる犬」

私立探偵リュウ・アーチャーは犬の訓練学校で知り合ったフーパー夫人から「突然姿を消した愛犬オットーを探してほしい」との依頼を受けて調査を始める。闇に葬り去ったはずの過去に予期せぬ形でスポットライトが当たり始めると、当事者たちの思惑が交錯していき…

シャーロット・アームストロング「敵」

既読につき、読了ツイート省略。

ウィリアム・バンキア「ジャズの嫌いな犬」

英語教師ノーマンはホテルのオーナーで恩人でもあるジャックの願いを叶えるべく、普段は教会でゴスペルを演奏している盲目ピアニストで旧知の仲でもあるジョーに声をかけ、ホテルのバーでジャズを演奏するよう説得する。ジャックの狙い通り、ジョーのセッションは毎回大盛況。迷惑そうな顔でその場を去って行くのは、ジョーの盲導犬クィーニー (ジャーマン・シェパード)だけ。彼女はジャズがお好きではないようで… 犯人も動機もすぐにわかってしまう単純な事件だけれど、クィーニーの可愛さと周囲の人間たちの温かみでほっこりできる佳作でした。

ポール・W・フェアマン「闇の中を」

戦争中に人殺しを命じられ続けて人間嫌いになったドーベルマンのプリンスは、破壊された建物の陰に身を潜める盲目の少女ティナと出会い、人間の温もりや優しさを思い出し、彼女との間に強い絆を結ぶ。亡命して裕福なアメリカ人家庭に引き取られたティナは、元メイドが首謀する身代金目的の誘拐事件に巻き込まれるが… ごく限られた相手にしか気を許すことのできない一人と一匹の魂の共鳴を神秘的に美しく表現する一方で、浅はかな人間たちの描き方にはどこかコミカルな皮肉が込められており、その対比が面白かった。

マイケル・ギルバート「非常口」

ワルシャワのホテルの入口でろくに服も着ないまま警官に連行される男、それを目にした掃除夫が話しかけるキオスクの男、その報告をロンドンで受け取る銀行支配人… なんだなんだ?と読み進めるうちにパズルのピースがはまっていくのが楽しい、スパイものの短編。

ロン・グーラート「なぜうちの犬は吠えないか」

かつての美男子ぶりを中年太りで失ってしまった初老俳優デントは、高視聴率の主演ドラマで共演している飼い犬ディーモンの反抗的な態度や演技に悩まされ、日に日に憎しみを募らせていくが… 賢い上に感情が強い犬はちょっと怖いですね。

ジョイス・ハリントン「ブーツィーをあの世へ」

石油を掘り当てた父親のおかげでお金の苦労を知らないブロンド美女ブーツィーと親しくなった主人公はなりゆきで彼女と結婚するが、弁護士の助言を受けた妻が突然倹約に目覚めて切り詰めた生活を始めたことに大いに戸惑い… お犬さまの一人勝ち。

エドワード・D・ホック「レオポルド警部、ドッグレースへ行く」

既読につき、読了ツイート省略。

ワーナー・ロウ「リンカーンのかかりつけの医者の息子の犬」

両親の不在中に愛犬バディが隣家の赤ちゃんに噛みつくという騒ぎを起こしてしまい動揺を隠せない少年サム。判事から死刑判決を受けたバディをやむなく射殺しようと銃を構えるサムだったが… ロウらしい黒めのユーモアが炸裂する一編。

フランシス・M・ネヴィンズJr. 「こちら殺犬課」

他書にて「ドッグズ・ボディ」として既読につき、読了ツイート省略。

Q・パトリック「ポピーにまつわる謎」

どこへ行ってもファンに囲まれてしまうため、まともな外出ができずストレスで一杯の人気女優アイリスは、貸し別荘の隣人ミス・クランプと親しくなり、彼女の愛犬ポピーとともに中庭でくつろぐことを許されるのだが… アイリスの溌剌とした探偵ぶりが魅力的。

ヒュー・ペンティコースト「シャンブラン氏への伝言」

80歳を超えても魅力の衰えない元踊り子ヴィクトリアは、昔の恋人シャンブランが経営するホテルのペントハウスで鉄壁警護の下に愛犬トトと暮らしている。ある日、庭に入り込んだ青年を見つけ… 忠実なのに超無愛想なトトの活躍が微笑ましい。

バリー・ペローン「ラッフルズ、バスカヴィル家の犬を追う」

ストランド誌に掲載されたコナン・ドイル作「バスカヴィル家の犬」の結末にがっかりしたという読者から怪奇な内容の手紙を受け取った編集長は、同誌の連載記事を担当中のラッフルズに相談を持ちかけたところ… 読んでいる小説に、自分がよく知っている別の小説やその作者が実在のものとして出てきて、両方の作品の登場人物同士がニアミスする、そんな入れ子っぽい現象が好物です。ダートムアの荒地の不穏さとラッフルズという超ポジティブ人間の遊び心が絶妙なバランスを保っていて、読み応えがありました。

ビル・プロンジーニ & ジェフリー・ウォールマン「コヨーテとクォータームーン」

人気のない家のガレージの中で吠え続けている犬がいるとの通報を受けた動物管理局員のジルは、現場で喉の渇きに苦しむドーベルマンを発見するが、ここで元々飼われていたのはもっと毛がふさふさした犬のようで… ジルが犬と接する際の堂々とした様子、事なかれ主義の上司の恨み節を物ともせずに自ら信じる道を突き進む性格、窮地に陥っても恐怖心を制御して正しく立ち回ることができるタフさ、そして何より、冒頭でガレージから救い出したドーベルマンとの間に瞬時に出来上がった強い絆… 清々しさ満点でした。

ジョン・ルーディン「薪売り」

知的障害の少年エドワードの日課は、自慢の手作り荷車に長さを揃えて切った薪を几帳面に積み上げて売り歩くこと。ある日、泥が詰まった車輪の手入れをしていると、口の悪いトラック運転手のエドに絡まれて… この短編集で随一の、背中がヒヤッとする読後感に満足。

レックス・スタウト「真昼の犬」

探偵ネロ・ウルフに追い返された依頼人が間違えて持ち帰ってしまった自分のコートを取り返すべく、彼のアパートへ足を運んでみたところ、人だかりに加えてパトカーまでもが入口を塞いでいたため、静かにその場を離れた助手アーチーに、一匹の黒い犬がついてきて… さて、お好きな方がいらしたらゴメンナサイ。以前からどうも苦手だなぁと思っていたネロ・ウルフ嫌いが決定的になってしまいました!元々、足を使った捜査をしない安楽椅子探偵は好みじゃないのですが、この人は何でこんなに偉そうにふんぞり返っているんですかね!事件そっちのけでイライラしちゃいました!