Aira's bookshelf

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書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

マーティン・H・グリーンバーグ編『新エドガー賞全集 アメリカ探偵作家クラブ傑作選 (14) 』

(読了日:2017年4月25日)

ジャック・リッチー「エミリーがいない」

妻エミリーからの電話に顔色を失い、エミリーを街で見かけたという知人には「サンフランシスコへ行っている」と答えて手を震わせ、エミリーからの手紙を隠し、音楽室から聴こえるエミリーのピアノの音に驚く。そんなアルバートを怪しむ人物が… 妻殺しで自責の念に駆られて頭がおかしくなった夫を描いた作品かと思いきや… うふふ、そういうことか。ジャック・リッチーは初めて読んだのでまんまと引っかかりました。いきなり楽しい一篇で始まった『新エドガー賞全集』です。

フレデリック・フォーサイスアイルランドに蛇はいない」

お金に困ったインド人医学生ラム・ラルはもぐりの解体業者でアルバイトを始めるが、人夫頭キャメロンから「異教徒」「黒んぼ」などと目の敵にされて屈辱を味わう。ヒンドゥー教の女神のお告げに従ってキャメロンへの復讐を実行するが… 何度もハラハラ、そしてついにホッ…… とはさせてくれないフォーサイス先生にぐるぐると弄ばれることを楽しむための一篇でした。

ルース・レンデル「女ともだち」

クリスティーンの習慣は毎週木曜に友人アンジーの家を訪れること。ある日たまたまアンジーが不在なのを知らずに家へ入ってみると、彼女の夫デーヴィッドが一人で「あれ」を楽しんでいるところに出くわしてしまい… レンデルを初めて面白いと思った。これは好き。「あれ」が何なのかをなかなか明かさずに引っ張っておいてようやく真相を明かすまでの流れが絶妙。グイグイと引き込まれてしまった。フランソワ・オゾン監督がこれを原作として映画を作ったとのこと。どう着地させるのかを楽しみに観てみたい。映画のタイトルはネタバレにつき省略。

ローレンス・ブロック「夜明けの光の中に」

私立探偵マット・スカダーが通うバーの常連客ティラリーの家に強盗二人組が押し入り妻が殺された。犯人は盗みは認めたものの妻殺しはティラリーの依頼だったと証言。ティラリーが無実であることを示す証拠を探すよう頼まれて調査を始めたスカダーは… スカダー渋い。訳ありで涙目になっている知人女性 (一度だけ寝た相手) に気付いても相手から合図されるまでは隣のスツールには座らずに距離を置くとか、彼なりの男くさい美学にしびれた。真犯人を追い詰めるための細工の仕方がハードボイルドなところもしびれた。スカダー渋い (二度言った) 。

ジョン・ラッツ「稲妻に乗れ」

私立探偵ナジャーはトレーラー暮らしをしている女性ホリー・アンから「来週処刑される予定のカーティス・コルトは無罪。有罪を決定づけた四人の証人にもう一度話を聞いて、彼らが見たのはコルトではないかもしれないと言わせてほしい」と頼まれたが… ホリー・アンの卑怯さに気分が悪くなるだけの作品だった。後ろ暗いところがある人間は誰のことも信じることができないのだ。なんと虚しいことか。それが生きていく上での最大の罰になるというのに、必死で法の下における罰から逃れようとする愚かさ。同じタイトルで長編も書かれた。私は短編で十分。

ロバート・サンプスン「ピントン群の雨」

保安官特別補佐エドの妹スーが自宅で殺された。近くの道路に停まった車の中からは保安官助手フレミングの射殺体も見つかった。スーと交際していた良家の息子トミーをエドが訪ねると、彼は二件の殺人を告白する手紙を書いていた… 救いのない荒んだ一篇。

ハーラン・エリスン「ソフト・モンキー」

大昔に亡くした赤ん坊の代わりにぬいぐるみを偏愛して生きるホームレス老女のアニーは、四人の男による残忍な殺人の一部始終を目撃してしまい彼らから命を狙われることに。暴力描写が多く思わず目を背けたくなるがアニーと追っ手による攻防はスリル満点。

ビル・クレンショウ「映画館」

ホラー作品上映中の劇場で観客の一人が喉を搔き切られて死亡する事件が発生。異様な事件に街は盛り上がり模倣犯まで現れる騒ぎに。コーリー警部補はきっと犯人はまた同じことを繰り返すと信じて夜な夜な劇場へ通うが… 犯行現場がわたしにはホラーでした。うっぷ。

新エドガー賞全集 アメリカ探偵作家クラブ傑作選(14)

新エドガー賞全集 アメリカ探偵作家クラブ傑作選(14)