Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

ドラッグストア・カウボーイ (1927)

Story

定職に就く機会に恵まれず貧しい生活を送る青年ジェリーは、日がな一日ドラッグストアの前に佇んでは街行く女の子たちを眺めて過ごしている。人から笑いかけられたことなどない自分に向かって、かつて素敵な笑顔を見せてくれた美女ベティの姿を求めて。ある夜、もはや将来を感じられなくなった街を離れる決意で歩き出したジェリーは、お金持ちの父親から買い与えられた愛車がガス欠を起こして途方に暮れているベティを見つけ…

 ※ drugstore cowboy = 薬局などが並ぶ街角をぶらついたり路上にたむろしたりする若者を指す俗語

Aira's View

前年に書かれた短編「舞踏会の夜」から一転、言外にいろいろな含みが感じられる人物描写となっており、直接は言葉で表現されていない部分を自分なりに想像して補いながら読む楽しみを味わうことができた。主人公ジェリーの飾らない優しさ・どっしりとした落ち着き・夢を忘れずにいる芯の強さは魅力的でよいが、彼が恋する相手ベティの性格や言動には理解も共感もできない部分があまりに多い。彼女のせいでせっかくのおとぎ話が破綻するのではないかと (嫌な意味で) ハラハラさせられる一方で、ウールリッチ流「ボーイ・ミーツ・ガール」が遠からず開花する気配をほんのりと感じられるのはうれしい。

Work

原題:The Drugstore Cowboy
訳者:門野 集
収録:『コーネル・ウールリッチ傑作短編集3 シンデレラとギャング』 白亜書房

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