Aira's bookshelf

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書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

コブラの接吻 (1935)

Story

主人公チャーリーは殺人課所属の刑事。体調不良のため上司から長期休暇を取るように言われ、妻と義弟と一緒に山荘で時を過ごしている。そこへ妻の父親が再婚相手のベーダを連れてきた。彼女はアジアの血が入っており、どことなく蛇を連想させる不気味な様子をしていた。晩餐の後、暖炉のそばで身を寄せ合いながら異様に長いタバコを吸おうとしている新婚夫婦を残して、チャーリーは二階の寝室へと引き上げるが…

Aira's View

創元推理文庫の短編集を中心にいくつものウールリッチ作品を読んできたが、これほどノワールなものは思い出せない。得体の知れない異国の香りに対してチャーリーが覚えた漠然とした恐怖がはっきりとした形をとった時、チャーリーとベーダによる命を懸けた対峙が始まる。ハードボイルドな要素に加え、刑事=サディスティックというウールリッチお得意の設定も持ち込まれ、物語は緊迫度を増してゆく。短い文章をリズムよく配置して読者に畳み掛けるように描写を続ける手法が疾走感を生み出し、終盤の見せ場のスリルを最大限に高めている。当時、徐々にウールリッチの筆力がミステリ寄りに磨かれつつあったことが伝わってくる作品。

原題:Kiss of the Cobra
訳者:高橋 豊