Aira's bookshelf

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Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

エラリー・クイーン編『ミニ・ミステリ傑作選』

(読了日:2017年2月25日)

ニュートン・ニューカーク「探偵業の起源」
サミュエル・ホプキンズ・アダムズ「百万に一つの偶然」
スティーヴ・アレン「ハリウッド式殺人法」
シャーロット・アームストロング「タイミングの問題」
フィリス・ベントレー「逆の事態」
ロバート・ブロック「生きている腕輪」
ロアック・ブラッドフォード「保安官、決断を下す」

悪徳弁護士に騙されて農場が抵当に入ってしまった元保安官ビリー。弁護士に銃を突き付けて抵当解除を意味する受取証を入手。裁判所へ向かうと「脅迫された」との通報を弁護士から受けた保安官がビリーを待ち受けていたのだが…

ルイス・ブロムフィールド「ウェディング・ドレス」

長い年月を経て黄ばんだ花嫁衣装に身を包んだ老嬢ゼノビア・ホワイトがベッドの上で横たわったまま帰らぬ人となった。彼女がずっと一人で背負ってきた重くて悲しい過去とは。

マーク・コネリー「検死審問」

陪審と証人による会話のみで進行。小人症の役者二人が同居中の下宿部屋で死亡。同一凶器による刺し傷が二人の死因であった。彼らをよく知る舞台監督の証言には推測の域を出ない部分が多く、安楽椅子探偵小説 (苦手) を読み終えた時に似た非爽快感だけが残った。

トマス・B・コステイン「カードの対決」

客船内で日々ポーカーに興じるアッカーズはいかさま師が2名紛れ込んでいるのを確信。それを衆人環視の中で証明しようと意気込んで賭けに出てみたのだが… ポーカーの知識 (役の強い順) がないとオチがピンとこずに終わる超短編。小粋な仕上がり。

ジェイムズ・グールド・カズンズ「牧師の汚名」

書店主ジョレスのもとを訪れたインゴールズ大佐。牧師だった兄 (故人) 宛てに届いた請求書は何かの間違いのはずだと主張するが、店主はそれを認めずに支払いを迫る。キレのあるラストで自然と笑い声が出る。バー「放心家組合」好きにオススメ。

ロード・ダンセイニ「演説」

「奇妙な味」を期待しすぎると肩透かしを食らう可能性のある作風ながら最後まで一気に読ませる筆力はさすが。常に一定の濃さで漂うダンセイニ独特の真っ黒にちょっとだけ明るい白を混ぜたようなユーモアが何とも言えず心地よい。有名な短編につきあらすじは省略。

ジョン・ゴールズワージー「隣人」

二人の間に何があったと解釈したらいいのかピンとこず。感想の書きようがない。回りくどい風景描写、勢いを感じられない展開、頭の冴えた探偵役の不在など、好きになれない要素がぎっしり詰まった短編。2017年最初の消化読書となった。何だ、この疲弊感は。

アントニー・ギルバート「わたしの目の黒いうちは」

以前「いたちごっこ」を読んだ時にも感じたが、彼女の描く女性は被害者だろうが犯人だろうがいちいち鼻に付いてどうも苦手。じっとりして胸が悪くなるタイプの女が多い。他の作家ならそれもまた楽しめたりするんだけど。相性か。女流作家。

W・ハイデンフェルト「月の光」

かつて秘密部隊の曹長を務めたことのある女性大尉が「ボーイ・フレンドを国に捧げた」過去を語る。ゲルマン語のルールを知る人ならば途中で (人によってはタイトルだけでも) 簡単に結末がわかってしまう。もう一捻りあるとよかった。題材は好み。

ジェラルド・カーシュ「詐欺師カルメシン」

華麗なる詐欺師かただの大法螺吹きか。妙に弁の立つ老人が語る「暖房と照明を無料で手に入れるばかりか、それを手に入れる苦労に対してたっぷり謝礼金を支払ってもらえる方法」とは。こういう能力はぜひ難事件解決のために役立てていただきたく存ず。最も気に入った一文が「六個の形容詞と三個の名詞を組み合わせて (中略) 連中の肉体と魂を粉砕して地獄に落とした」という地の文だったというところからいろいろ察してください。

ラドヤード・キップリング「パンべ・セラングの限界」

蒸気船の水夫頭パンべと火夫ナーキードの間に生じたちょっとした諍いがこじれパンべが足に刺し傷を負う。その恨みを晴らす日を長らく待ち続けるパンべは、偶然知り合った親切な紳士の手助けによってナーキードとの再会を果たし… 出た出た、どこがミステリなのかよくわからない超短編

ジャック・ロンドン「豹男の話」

猛獣を鞭一本で自在に操る豹男が語る、ある人間の恨みを買ったライオン使いが迎えた悲しい末路とは。探偵があれこれ調べる間のない超短編だから仕方ないけど、第三者が他人に起きた出来事を語る形式は物足りない印象になりやすい。よほどの意外性がない限りは。

フィリップ・マクドナルド「信用第一」

主人公ハワードは旅先で出会ったデボラと恋に落ちて交際。デボラの父 (賭け屋として一財産を築いた) から「自分で稼いだ十分な財産がない」という理由で結婚を反対されてしまう。愛するデボラと結ばれるためにハワードが思い付いた一獲千金の方法とは。こういう類のトリックは初めて。カラッとしたユーモア。未読のうちは何のおかしみも訴えてこない平叙文からなる原題だが、読了後には一転してクスクスと笑いを誘ってくるのが楽しい。当事者の言動とともに話が展開する短編は活気があって好き。

キャサリンマンスフィールド「パール・バトンはいかにして誘拐されたか」

人物、服装、風景… 何もかもがぼんやりした印象で終わる。しかし「奇妙な味」とも違う。何なんだろう。調べたらヴァージニア・ウルフに大きな影響を与えた作家とのこと。子ども目線で描かれたとすればある程度は納得。なぜミステリとしてこのアンソロジーに載ったのかは謎のまま。

フェレンツ・モルナール「最善の策」

ある支店の出納係フロリオが着服を行なっている旨を告発する匿名の手紙が頭取の元へ届く。調査員を二度まで派遣したが着服の事実を確認できない。支店長代理を兼務するフロリオが「今回の騒ぎで悪評が立ってしまったので辞職したい」と頭取に直訴したところ… ベタと言えばベタな展開だが「これぞショートショート!」といった醍醐味がある。テンポがよくてユーモアもきっちり詰まった一編。爽やかな読後感に包まれる。こういう人、現実の世界にいっぱいいるんだろうと思うと「がんばれ!」と肩をポンと叩いて応援したくなる。

オグデン・ナッシュ「殺すか殺されるか」

妻、義妹、その娘、使用人と暮らすブランダーは、相次いで自分の身に降り注ぐ不可解な出来事のせいで、同居者の誰かから殺意を抱かれているのではないかと疑うようになり… ドメスティック・ミステリー (狭義) の典型。ゾクッとする唐突な終わり方。作者は詩人として著名。ヒタヒタと「その時」が迫りくるのを本能的に察知した人間の内面をリズム感のある文章でバランスよく披露した印象。

ロバート・ネイサン「スタジアムに死す」

ブラックな設定はいいんだけど転結が地味すぎる。あまりにサラッと書いてあるのでオチの部分をもう少しで見落とすところだった。だから何???という読後感がツライ。しかもミステリじゃないし。あー!モヤモヤする!

エルマー・ライス「良心」

とある短編を雑誌編集部に持ち込んで以来「あの話のモデルはわたしではないのか」という指摘や批判が相次ぐようになったハミルトンの作家人生は今後いかに?という超短編。終わり方が何とも雑で残念。ネタ切れで困っていたのは著者本人なのでは… と疑いたくなる作品。

ディラン・トーマス「真実の物語」

短いながらも濃厚な世界。マーサは食物と寝床を得るために作男とともに寝たきりの老女の世話をするだけの日々を送る。お金は老女が敷き布団の下に貯め込んでいるためにマーサは一文無しで外界との接点もない。世間から隔絶された孤独な人間の静かな狂気を描く。

アレグザンダー・ウールコット「Rien Ne Va Plus」(仏語で「賭けは終了」の意)

カジノで負けが込んで一文無しとなった白い前髪のアメリカ人青年。意気消沈した様子でカジノを後にした翌朝、近くの海辺で胸を血染めにした彼の死体が見つかり… 痛快なオチが鮮やかな超短編。ウールコットは、ミステリ好きにはおなじみ「パリ万博事件」が都市伝説ではなくて事実だと主張し、それを裏付ける記事を載せた新聞名まで発表したけれど、その肝心の新聞記事が結局どこにも存在しなかったという話があるそうだから、わたしにとっては怖い顔して実はいたずら大好きなかわいいおじさん。

ゾーナ・ゲイル「婚礼の池」

1921年に女性で初めてピュリッツァー賞を獲得した劇作家による幻想系の短編。妻を殺した罪を突然告白したジェンス。だが彼の妻は死んではいなかった。妻への殺意と罪悪感によって追い詰められていくジェンスの末路とは。現実と幻想が混じり合い全編に謎が満ちる。

ヴィクター・カニング「壁の中へ」

カフェの常連客同士でいつの間にか顔見知りとなった三人の男性。その一人ヘイヴァーストックが久しぶりに現れるも冴えない顔色で「街で人の姿が突然消えるのを二度も目撃した」と打ち明ける。残る二人は「休暇が必要だな」「眼科に行けよ」と冷やかすが… ソフトでコミカルな怪奇ものといったところか。ラストで二人を襲った感情を読者がそのまま引き受けることで狐につままれた感覚に。タイトルに「壁」と入っているだけの共通点だけど、無性にエイメの「壁抜け男」が読みたくなった。

アンナ・カサリン・グリーン「青ペンキの謎」

知人から急なペンキ塗り替えの依頼を受けた業者。職人が現場だと信じて壁のペンキを剥がした建物が実は…。以前この作家の「医者とその妻と時計」がいたく気に入ったので、身を乗り出すようにして読んでみたものの、あらら、何じゃこりゃ。脱力。小説に著者視点入れてくるのホントやめて。いきなり「読者のみなさん」なんて話しかけられても困るから。

オリヴァー・ラ・ファージ「幽霊屋敷」

実らぬ恋の相手スウが強盗に殺されたと聞いて絶望したジョージは船上での死を望んだが失敗。奇しくもスウの暮らした屋敷に近い浜辺へ打ち上げられる。大切な娘の不在を受け止め切れないまま屋敷で過ごすヘイル夫人が出迎えてくれるが、どこか言動が奇妙で… 不得手な超自然短編が続く中でこのタイトル。一旦スルーの後に戻ってきて読了。これは名作だ。読んでよかった。不思議と不気味さはなく哀愁を味わう仕上がりだった。あまりに気に入ったので著者のことを調べたところ、本作で1931年O・ヘンリー賞の最優秀超短編賞を獲得したとのこと。納得、納得。

アーサー・ミラー「ある老人の死」

老人の自然死の瞬間に立ち会った警官ハーバート。その老人はハーバートがまだ新人だった頃に自殺未遂で立件、だが病院送りにはせず釈放した相手だった。何もすることがない毎日に嫌気がさして一度は自殺まで計った老人をこれまで生かしてきた力は何だったのか。昨日述べた「幽霊屋敷」もよかったが、わたしはこの短編にこそO・ヘンリー賞をあげたいと思った。泣かせる名作。ところどころウールリッチぽさも感じさせる湿った雰囲気があってよかった。いつかアーサー・ミラーにハマる日がくる予感がするけれど、今のところ作家研究はウールリッチに専念したい。

クリストファー・モーリイ「ダヴ・ダルセットの明察」

文学探偵 (いかにも胸高鳴る字面ではありませんか) ダルセットが食堂車で相席した三人の男性。マティーニを13杯注文してオリーブだけを食べるなどの不思議な言動が続く。はて。彼らの正体は?彼らが妙にこだわっていた数字の意味とは?

サキ (H・H・マンロー)「開かれた窓」

神経療法のため片田舎へ移り住んだフラムトン。姉の紹介でサプルトン夫人の屋敷を訪ねると、夫人の姪ヴェラが出迎えて話し相手になってくれるのだが… 怪奇・幻想小説の一種かと思わされる展開でも、短編の名手サキが著者であることをお忘れなきよう。

作者不詳「絶妙な弁護」

高等弁護士ヴォーン氏は馬車で相乗りになった男 (被告である親類のために750ポンドもの大金を払いに裁判所へ行く途中) から聞かされた事件に興味津々。弁護士を立てずにいる被告のために一肌ぬぐことを決意し… 作者不詳となった裏事情等を妄想するのもまた一興。

ミゲル・デ・セルバンテスサンチョ・パンサの名探偵ぶり」

ソロモン王の裁きをモチーフにしたと思われる。お金を貸したが未だ返してもらっていないと訴える老人と、たしかにお金は借りたが間違いなく返したと主張する老人。パンサ知事による判断はいかに。どことなくスッキリしない終わり方。

アントン・チェーホフ「子守歌」

主人公は靴屋に住み込み奉公する少女ヴァーリカ。連日の重労働に加え、寝付きの悪い赤ん坊の世話も終夜しなければならず、とにかく眠い。あまりの眠さに現実と幻覚の間を行ったり来たり。社会の底辺で生きる少女が耐えがたい毎日から逃れる方法はあるのか。

チャールズ・ディケンズ「手袋」

これはひどい。あはははは。以上。

アレクサンドル・デュマ「ナイフの男」

愛馬で移動中に身体の不自由な男と出会ったボウ・アカス。目的地が似ていたことからその男を馬に同乗させたが、別れ際に男から「これは俺の馬だから下りろ」と言われて裁判で争うことに。裁判官はいかにして馬の持ち主を見抜くのか。

ギイ・ド・モーパッサン「復讐」

息子を殺されて以来、愛犬と淋しく暮らす老母。海を隔てた場所でのうのうと暮らしている犯人に自ら復讐できるほどの身体の自由は利かない彼女が思い付いた復讐方法とは… かなり早い段階から結論が見えていたはずの読者をもゾッとさせる終盤の文章の不気味な力。

ギイ・ド・モーパッサン「正義の費用」

小国モナドは賭博場での儲けを財源として国政が何とか回る程度の経済力しかないため、殺人犯を死刑に処す設備も費用も賄えなかった。大臣らは死刑を終身刑に変更することにしたが、これはこれで莫大な費用がかかり… 前作とは大違いのユーモラスな一編。モーパッサンはカジノで大損したか何かでモナコに恨みでもあったのかしら。ひどい茶化し方に思わず笑った。

マーク・トウェイン「わたしの懐中時計」

故障した懐中時計を修理に出しても出しても直らないどころか状況は悪化する一方。ストレスがピークに達した持ち主は… 少年向け冒険小説の作者としてしか認識のないトウェインが、まさかこんな毒のある笑いがこみ上げる大人向けの短編を書いていたとは。

ヴォルテール「犬と馬」

妻と離縁して以来、動植物の研究に没頭して炯眼を手に入れたザディッグ。行方不明になった王妃の愛犬と国王の愛馬の特徴をスラスラと言い当てたがゆえに面倒なことに巻き込まれ… 皮肉な寓話とでも言えばよいのか。『クイーンの定員』で既読だったことに途中で気付いた。

スティーヴン・リーコック「これ以上短縮できない探偵小説、または、髪の毛一本が運命の分れ目、または、超ミニ殺人ミステリ」
ジョン・ディクスン・カー「パラドール・チェンバーの怪事件」
医学博士ローガン・クレンデニング「アダムとイヴ失踪事件」
マーガレット・ノリス「探偵の正体」

ホームズがまさかの◯に生まれ変わていたという変則もの。好きな人にはよさそう。

マージェリー・アリンガム「見えないドア」

3つ目のアリンガム短編。初のキャンピオンもの。久しぶりにスカッとする探偵小説を読んだ!という確かな手応え。犯人にたどり着く確率が下がり続ける中でキャンピオンが放つ華麗なる逆転ホームラン。変人じゃない探偵もたまにはよろし。物腰が柔らか。

エリック・アンブラー「消えた暖房炉」

持病が災いして起きた転落死であると地元警察が結論付けた老女の死に対し、はるばる異国からやってきた元警察官のチサール博士が物申す。キチッとした理詰めが好きな人には面白いけれど、物語全体に平坦な印象がある。地味だと感じる読者が少なくないかも。

ローレンス・G・ブロックマン「イニシャル入り殺人」

ワイルダー刑事のもとに友人ポーソンから「自宅で妻マージが殺された」との連絡が入る。マージの愛人であるとの噂が絶えない男のイニシャルが入ったシガレット・ケースが現場に残されていたが… 刑事の物静かな人柄と冷静な観察眼が魅力的。

アーサー・C・クラーク「火星の犯罪」

地球からやってきた宝石泥棒が火星の至宝「シレネの女神」を盗み出した。犯人は捕まったものの女神像の実物は未だ見つからず… 火星を舞台にしているわりには犯罪の手口や謎解きは平凡な印象。いかにもSF‼︎な斬新な設定を期待しすぎたのかもしれない。

ジョージ・ハーモン・コックス「ペントハウスの殺人」

劇作家ヴァンスは数年来共作してきた相手コールドウェルに対して殺意を抱くように。彼の才能への嫉妬そして意中の女性を奪われた恨みを晴らすべく行動に出る。二人の関係がわかりにくいせいか、物語のスピード感が削がれてしまったのが残念。

エドマンド・クリスピン「川べりの犯罪」

とある農家で若い女中が絞殺された。彼女は誰かの子供を妊娠中だったという。警視トムはその農家の隣に住む州警察長宅を尋ね、事件当日の様子などを聞くことにしたのだが… 物語の途中に編集者註がデカデカと挿入されていて興ざめ。このところ不発続き。

C・P・ドンネルJr.「殺人のメニュー」

財産家の夫を二人連続二年以内に亡くしたマダム・シャロンは殺人を疑われているが、証拠が何一つ出ないまま時が過ぎる。そんな中、ミロン警部が話を聞こうとマダムの家を訪れると、彼女は夫との日々を淡々と語り始め… ラストの解釈に迷う珍妙な短編。

アンドルー・ガーヴ「ダウンシャーの恐怖」

自動車学校の教習生が街中で事故を起こすと担当教官に脅迫状が届けられた。その後、交通違反をした人物が次々と殺される事件が発生。現場には違反内容を指摘するメモが必ず残されていた。パトロールを強化してようやく見つけた犯人とは。最終行が秀逸。

マイケル・ギルバート「ティー・ショップの暗殺者」

店に入るやいなや知人のヘイズラーリッグ警視が何やら合図を送ってきたため、主人公がそばへ行くと「今この場所に名の知れた政治暗殺者が来ている」と告げられる。警視とともに4人の客を観察すると… 思わずアッ‼︎と声が出る驚きの展開に。

ベン・ヘクト「シカゴの夜」

新聞記者にせがまれて読者受けしそうな興味深い事件をクチック刑事が思い出しては語る形式の超短編。どの事件も当事者が個性的で笑う。以前読んで気に入った「十五人の殺人者たち」と同じ作者。文章が清々しくてカラッと楽しめるのは作者の人柄によるのかもしれない。

O・ヘンリー「二十年後」

あらすじを書くだけでネタバレしそうなので省略。いかにもなO・ヘンリー節。結末はすぐに予想できる。上品すぎる感じであまり好きにはなれない作家。さぁ、読者のみなさん、この結末すばらしいでしょう?感動しなさい!と言われているような気がしてしまうのはなぜ。

マイケル・イネス「アプルビイ警部最初の事件」

14才のアプルビイは美術館で付け髭を落として慌てる不審な男を目撃。直後、展示品が盗まれたとして現場が大騒ぎに。アプルビイの証言によって男が取り押さえられたが、彼のヒゲは本物、しかも何も盗んでおらず… さぁ、アプルビイ少年どうする?

ロックリッジ夫妻「殺人のにおい」

逃亡中の連続殺人犯に妻を射殺されたとの通報を受けたヘイムリッチ警部たちは現場に急行。通報したアーサーはすっかり取り乱していたが、しばらくすると銃声を聞いた時に自分は畑でトマトの手入れをしていたことなどを証言し始め… 鼻が悪いと探偵できないね。

アーサー・ポージズ「ビーグルの鼻」

ある男を刺殺した容疑がかかる男ベネットはナイフやシャツに付着しているのは自分の血であると主張。捜査が行き詰まった警官ニュービーは自然界のあらゆることに詳しいと評判の老人に相談を持ちかけることに。最後まで読んでびっくりするのがこの老人の正体。

エラリー・クイーン「角砂糖」

騎馬巡査ウィルキンズは公園の喫茶店で角砂糖を手にした男性の死体を発見。身元は競馬の胴元シェイクスと判明。発見時に死体のそばにいた男性3名を連行して事情を聴くが、事件との関係が見えてこない… アンソロジーに自作を入れる時の気持ちってどんなだろう

パトリック・クェンティン「土曜の夜の殺人」

スキー場で知り合ったベントン夫妻から食事に誘われたトラントはベントンの診療所に向かう。映画館へ出かけた妻ドリーから「まもなく帰宅する」と電話が入った直後、今度は「映画館で殺人が起きた」との連絡が入り… 起承転結に抜け目がない佳作。

クレイグ・ライス「馬をのみこんだ男」

馬をのみこんだと思い込んでいる精神科患者に対し、麻酔→腹部に少し切り傷を付ける→覚醒→手術室にあらかじめ用意しておいた馬を見せる、という治療を施したところ、仰天した患者が心臓発作で死亡して… 刑事弁護士と警部の息の合ったやりとりが楽しい。

マージェリー・シャープ「ロンドン夜話」

小さな菓子店を営む老女が殺された。現場近くのコーヒーショップで店主と5人の客が事件について語り合う。そこへふらっと入ってきた医学生の正直な告白によって、その場の雰囲気が一転し… 何とも皮肉な展開にニヤリ。中編を読んだような手応えがある。

レックス・スタウト「サンタのパトロール

妻のために買った高級指輪を女性社員に盗まれたとして保険会社職員を呼びつけて保険金を払えと騒ぐ通販会社経営のデュロス。ヒップル刑事の鋭い推察と機転が三人の関係者それぞれにもたらした粋なクリスマスの贈り物とは。オシャレで読後爽快な一編。

ジュリアン・シモンズ「神隠し」

人の多いビーチで妻の愛人を衝動的に刺し殺した小男。返り血を浴びながらも人目を巧みに避けて行方をくらました男の手口とその正体は。足を使った捜査ではなく刑事の一瞬のひらめきによって幕引きとなるタイプの作品。人物描写も薄い。全体的に物足りない印象。

アントニー・バウチャー「決め手」

アメフト八百長疑惑を調査中の探偵オブソーン。二人の選手から話を聞くことになっていたチームの監督が胸を刺されて死亡。現場の灰皿には何かの切れ端を燃やした跡が残されており…『ミニ・ミステリ傑作選』を締めるに相応しい一編。クイーンの遊び心が楽しい。

ミニ・ミステリ傑作選 (創元推理文庫 104-24)

ミニ・ミステリ傑作選 (創元推理文庫 104-24)