Aira's bookshelf

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Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

死の治療椅子 (1934)

作品紹介 短編

Story

歯痛に悩むロッジは腕のよい歯科医である友人スティーヴの元を訪れるが、先に来院していた貧しい身なりの患者が治療中におかしな唸り声を上げたあと急死してしまう。調べによると死因は致死量ちょうどの青酸カリ。スティーヴが容疑者として警察に連行されるのを目の当たりにしたロッジは、その友人の潔白を証明するために警察をも巻き込んだ大きな賭けに出るのだった…

Aira's View

邦題の字面が醸し出すおどろおどろしい雰囲気はどこにもなく、男二人の絆を楽しめるわかりやすい人間ドラマ。親友スティーヴを救いたい一心のロッジが身体を張って真実を求める姿に胸が熱くなる。向こう見ずとも言えるロッジの勇気をしっかり受け止めるスティーヴもまた魅力的。警察が頼りない (アイリッシュ作品ではおなじみ) おかげで、何の規則にも縛られず自由に行動する素人探偵の冒険を楽しむことができる。願わくば、敵役の内面描写がもう少し欲しかった。結末はあとひとひねりあってもよい気がするが、解決直前の緊迫感はなかなかのもの。

Aira's View 再び (ややバレ)

コーネル・ウールリッチ初の犯罪小説であるとの認識を持った今、改めて読了した。手慣れた様子で書かれているように感じた。臨場感いっぱいのスリルが出色。素人探偵ながら非常に機転が利くロッジが自分にできうる最高のパフォーマンスを発揮して歯科医の友人を救う。友のために命も張れるけど… のオチで一気に和む。最初はやたらと暴力的だった刑事がロッジに徐々に信頼を寄せていく過程にも味がある。バディものが好きな読者におすすめしたい一編。

 

原題 : Death Sits in the Dentist's Chair
訳者 : 村上博基