Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

A Young Man's Heart (1930)

(未邦訳作品につき『コーネル・ウールリッチの生涯』(早川書房) を参考に内容を紹介)

Story

主人公ブレアは、父の浮気が原因で母親と離ればなれの生活に。父はパーティー三昧の堕落した生活を送り、次から次に新しい恋人を作っては別れる始末。ブレアは家のお抱えコックの娘マリキータと相思相愛となるが、父の恋人の入れ知恵で欧州へ送られることになってしまう。マリキータに「必ず戻ってくる」と約束して出発したブレアだったが、急きょ行先変更して向かったニューヨークで地元名士の娘と知り合い…

Aira's View

作品後半で舞台が南米へとシフトし、主人公らが革命に巻き込まれるという異色作。反乱軍に占拠されたホテルでの緊迫した状況が描かれており、あらすじを読むだけでも手に汗握る出来である。この革命が主人公にもたらす偶然と、その偶然こそが運命だったのかと思わせる不条理さが読む者の胸を突くことだろう。

ところで、似たような短編をどこかで読んだことがある気がして読書ノートを一生懸命遡ってみました。革命が起きるその瞬間に居合わせてしまう主人公が出てきたのは、アイリッシュ名義で書かれた短編「日暮れに処刑の太鼓が鳴る」しか見当たらず。結末は似ても似つかないものだった。やれやれ、記憶なんて当てにならないものですね…