Aira's bookshelf

書棚の片隅でコーネル・ウールリッチ愛をささやく

Insult (1934)

(未邦訳作品につき『コーネル・ウールリッチの生涯』(早川書房) を参考に内容を紹介)

Story

極めて器量の悪いボードビル (歌・踊り・対話などを組み合わせた軽喜劇の意) 女優のリジーは、ホテルから劇場までの移動中、一人の水兵が自分を尾行していることに気付く。「あの人が自分という女に関心を持ってくれていたら…」と心から願う彼女だったが…

Aira's View

ウールリッチが Ted Brooks 名義で発表した作品。このペンネームを使ったのは一度きり。劇場で活躍するスターとしての人気を得ながらも、素敵な男性から一人の女性として見られたいという切なる想いはなかなか叶わないリジー。そんな女性の哀愁をウールリッチはどのような言葉で表現したのだろうか。シニカルに?あるいはしっとりと?それとも…?

Between the Acts (1934)

(未邦訳作品につき『コーネル・ウールリッチの生涯』(早川書房) を参考に内容を紹介)

Story

離婚成立後、それぞれ新しい恋人と付き合ってきた元夫婦が、とある劇場で偶然の再会を果たす。今の恋人がいかに自分にとって不釣り合いな存在であるかを認識した二人は……

Aira's View

私生活では女性と上手く付き合うことができなかったウールリッチだが、作品中の男女には妙に気の利いた会話をさせることがあり、それが彼の物語に魅力を添える大きな要素の一つだと認識している。本作に登場する元夫婦の間で交わされたであろう洒落た会話の数々を想像するだけでも楽しい。評伝では、同年に執筆された 4 篇のうちで最もよい出来だと分析されている。いつかきちんと読んでみたい。

I Love You, Paris (1933)

(未邦訳作品につき『コーネル・ウールリッチの生涯』(早川書房) を参考に内容を紹介)

Story

主人公は社交ダンスの教師をしている中年男性。年の離れた女性生徒に恋心を抱くが、彼女の側からすれば彼の存在は単なる「ダンス教師」でしかなかった。やがて、彼女は同世代の青年と恋に落ちて交際を始めるが…

Aira's View

生活苦と借金返済の重圧に晒されながら、2ヶ月にわたって必死でこの作品を執筆したウールリッチだったが、どの出版社からも相手にされることはなく、原稿は彼自身の手によって街のゴミ箱に捨てられたという。教会で何度も熱心に祈りを捧げたが、神は手を差し伸べてくれなかった… ウールリッチの信仰心が完全に損なわれたのは本作が理由だったのかと思うと、ファンとして苦しい気持ちはあれど、どんな仕上がりの短編だったのか興味を抱かずにはいられない。ウールリッチの自伝に記された概要でしか、この作品に触れることができないのは何とも残念である。